2020/3/3 名古屋ウィメンズマラソン2020
注目選手@ワコール・トリオ
当初から2時間21分台前半がターゲットだった3選手

 3月8日に行われるMGCファイナルチャレンジ女子最終戦の名古屋ウィメンズマラソン。松田瑞生(ダイハツ)が大阪国際女子マラソン優勝時にマークした2時間21分47秒を上回れば、東京五輪代表が内定する。だが福士加代子、安藤友香、一山麻緒のワコール・トリオが挑戦するのは、松田のタイムではなく2時間21分台前半だ。
 永山忠幸監督は昨年のクイーンズ駅伝の頃から「福士と安藤は2時間22分22秒(MGCファイナルチャレンジ設定記録)以上のタイムを持っています。一山を加えた3人で、(設定記録ではなく)安藤の持つ2時間21分36秒を上回りたい」と話していた。3人で練習することの相乗効果も期待できる目標設定をした。
 永山監督は就任時から一貫して、記録で追いつくことが世界と戦うための前提だと考え、その方針で強化してきた。MGCでは一山6位、福士7位、安藤8位と代表に届かなかったが、タイムが前提になるMGCファイナルチャレンジは、ワコール勢にとって望むところだろう。

前半のスピードが注目される一山
 3人の中で好調さがレースに現れているのが一山だ。12月に10000mで31分34秒56の自己新で走ると、今年2月の丸亀国際ハーフマラソンでは1時間08分56秒で日本人トップの5位。自己記録には7秒届かなかったが、丸亀の10km通過は31分33秒と10000mの自己ベストより速かった。コースの特性もあることだが、前半の入りが驚異的に速かった。
 マラソンは2時間24分33秒が自己記録でワコール3人の中でも3番目だが、過去3レースともインパクトのある走りをしてきた。初マラソンの2019年東京は、中間点を1時間10分29秒のハイペースで通過(大阪国際女子の松田は1時間09分54秒)した。
 MGC出場権(2レース平均タイムが2時間28分00秒以内)を得るために、わずか1カ月半のインターバルでロンドン・マラソンに出場。そのときは慎重に中間点を1時間11分51秒で通過し、2時間27分27秒で目的を果たした。
一山麻緒のマラソン全成績
回数 月日 大会 順位 日本人 記 録
1 2019 3.03 東京 7 1 2.24.33.
2 2019 4.28 ロンドン 15 2 2.27.27.
3 2019 9.15 MGC 6 6 2.32.30.
 3戦目となった9月のMGCは再度、スタート直後から飛ばした。5kmを16分31秒、10kmを33分34秒で通過。夏場ということを考えると超ハイペースの展開に持ち込んだ。10〜13km間で先頭集団から後れたが、一山の作った超速ペースが、スローペースを想定していた選手たちに影響したのは間違いない。先頭集団から後退した後も粘り、6位に食い込んだのは評価できる。
 一山は「怖い物知らずで行くことができたのであの走りができました」と話している。だが、「次のマラソンでは少し抑えてもいいのかな」とも。これはレース2カ月後のコメントで、今も同じ考えとは言い切れないが、丸亀ハーフでは10000m自己記録よりも速いタイムで10kmを通過した。前半を抑えても1時間10分前後で中間点を通過する。その力を身につけているのなら理想的だ。
 入社当初から福士の後継者として期待されている一山が、2時間21分台前半を出すためのスピードは身につけている。

3年前の名古屋で現役最高記録を出した安藤
 安藤友香は昨年2月、スズキ浜松ACからワコールに移籍した。リオ五輪代表の福士の持つ2時間22分17秒(2016年大阪国際女子マラソン優勝時)がワコール最高記録だったが、安藤は17年の名古屋で2時間21分36秒の日本歴代4位(初マラソン日本最高)を出している。チーム記録にはならないが、持ちタイムではチーム1番になった。
 だが初マラソン以降の安藤は、17年世界陸上、18年大阪国際女子、19年ロンドン、同年MGCと失敗とは言えない成績は残しているが、初マラソンのレベルの走りはできないでいる。
安藤友香のマラソン全成績
回数 月日 大会 順位 日本人 記 録
1 2017 3.12 名古屋ウィメンズ 2 1 2.21.36.
2 2017 8.06 世界選手権 17 2 2.31.31.
3 2018 1.28 大阪国際女子 3 3 2.27.37.
4 2019 4.28 ロンドン 13 1 2.26.47.
5 2019 9.15 MGC 8 8 2.36.29.
 そこは安藤自身が一番わかっているが、必要以上に以前の自分と比べたりはしない。
「2時間21分は過去のこと。過去の自分にとらわれず、今の自分を出し切ることでそのタイムを超えていきたいと思っています。周りからは初マラソン最高記録保持者、現役日本最高記録保持者という見方をされてしまいますが、今の自分を見て欲しい。さらに高いレベルに挑戦したいと思っていますから」
 聞かれたくない質問にも明るく対応する。
 クイーンズ駅伝は直前の体調不良もあり5区区間3位に終わったが、チーム内の練習は先頭で引っ張ったり、福士にラストで先着したり、中・長期的トレーニングは充実していた。3年ぶりに走る名古屋でワコールの安藤友香として、初マラソン時のタイムを超えるつもりだ。

5大会連続五輪代表がかかる福士
 そして陸上競技初の五輪5大会連続出場がかかる福士加代子が、25km過ぎで途中棄権した1月の大阪に続き名古屋を走る。常識的にはハードスケジュールだが、福士が2連戦にトライするのは3回目である。
 最初は2016年。大阪に2時間22分17秒で優勝したが、当時の選考規定では五輪代表決定とはならなかった。最終的には出場しなかったが、代表入りを確実にするために名古屋にもエントリー。世間的には陸連への抗議と受け取られたが、福士陣営は本気で名古屋出場の準備をしていた。
 2度目は3年後の昨年。1月の大阪に、東京五輪を目指す第一歩として出場したが(リオ五輪以来2年半ぶり)、13km手前で転倒した影響で走りが乱れ、35km過ぎで途中棄権した。しかし名古屋で2時間24分09秒(8位、日本人2位)をマークしてMGC出場権を獲得した。当時36歳。自己2番目のタイムで走り、現役レジェンドの底力を見せつけた。
 マラソンで13年世界陸上銅メダリストとなっても、福士のイメージはスピードランナーである。今も5000mの日本記録保持者で、トラックでは12年ロンドン五輪まで、3大会連続五輪に出場した。
福士加代子のマラソン全成績
回数 月日 大会 順位 日本人 記 録
1 2008 1.27 大阪国際女子 19 2.40.54.
2 2011 10.09 シカゴ 3 2.24.38.
3 2012 1.29 大阪国際女子 9 2.37.35.
4 2013 1.27 大阪国際女子 1 1 2.24.21.
5 2013 8.10 世界選手権 3 1 2.27.45.
6 2014 9.28 ベルリン 6 1 2.26.25.
7 2015 10.11 シカゴ 4 1 2.24.25.
8 2016 1.31 大阪国際女子 1 1 2.22.17.
9 2016 8.14 オリンピック 14 1 2.29.53.
10 2019 1.27 大阪国際女子 dnf dnf 35.5km
11 2019 3.10 名古屋ウィメンズ 8 2 2.24.09.
12 2019 9.15 MGC 7 7 2.33.29.
13 2020 1.26 大阪国際女子 dnf dnf 25km過ぎ
 リオ五輪後に故障などでブランクが生じ、37歳となった今は以前のスピードは期待できない。だが練習では(特に駅伝前は)、「後輩の力を借りながら」ではあるが、チームのスピード練習を以前と同じように走っている。昨年10月には5000mで15分47秒67もマークした。マラソンに必要なスピードは維持している。
 11月のクイーンズ駅伝は3区で区間5位。区間賞が当たり前だった頃の福士ではないが、松田ら若手トップ選手たちの何人かに勝っているのだ。
「シューって走れたので、これをもう少し長い距離でもできたらいいですね」と、マラソン(このときは大阪国際女子)に向けての抱負をクイーンズ駅伝後に話していた。“シューッ”という部分を言葉にするとすれば、力を抜いてスピードを出すことだという。
 福士の走り自体、スムーズな重心移動が武器だった。自身の走りを突き詰める先に、史上初の五輪5大会連続代表がある。


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